ウスバサイシンはカンアオイや徳川家御紋のフタバアオイに近縁の植物で、主にヒメギフチョウが利用します。ギフチョウも食べることもあり、飼育には充分使えるそうですが、可憐な植物を採ることは止めましょう。

ウツギは卯の花と呼ばれ、歌にも出てきて知られています。しかしウツギと名の付く木の多くはスイカズラ科で紛らわしいです。スイカズラ科の方は、トラフシジミはあまり好まないと思われます。スイカズラ科の方の種には、タニウツギ、ハコネウツギ、ツクバネウツギ（垣根に多く、蝶が好きな花）などがあります。ユキノシタ科の方には、岩肌に多く盆栽に利用されるヒメウツギや花期が4〜5月のウラジロウツギ（ウツギは6月）があります。葉裏の色について、ウラジロウツギと比較してあります。ウツは空の字を当て、幹の中が竹輪のように空洞になっていることに因ります。これはスイカズラ科もユキノシタ科も同様のようです。なお、トラフシジミは蕾の中身を食べます。

ウバメガシは海に近いところに生えるカシの一種ですが、葉の形は他のカシとはかなり違います。公園などで垣根としてよく利用されます。秋にはドングリがなりますので植えれば苗が簡単に手に入ります。和歌山では少し変わったウラナミアカシジミが食べることで近年注目されています。また、大阪府の南部から和歌山県の海岸に近いところでは岸壁や生け垣のこれをヤクシマルリシジミが食べます。蝶とは関係ないですが、食通にはたまらない備長炭の原料木です。我がバタフライガーデンでは一度自然に生えてきたことがありますが、抜いてしまいました。。。なお、ウバメとは姥芽で、新芽が茶色であるところから来ているそうです。

ウマノスズクサはどこにでも生えているわけではありませんが、淀川や神崎川の河川敷や土手に生えています。非常に根が深いので持ち帰るためにはかなり努力して掘らなといけません。一旦活着すると非常に繁殖力が旺盛なようです。似たような蔓（つる）草が多いですが、この草の葉は基本的に丸みがありとがったところがありません。独特なニオイがあるので、初めての人はとりあえず葉っぱをちぎって臭ってみてください。葉にはウマノスズクサ属（ Aristolochia）に基づく名のアリストロキア酸が含まれ、腎毒性や発ガン性があるとも言われています。ただしこれが臭っているわけではなさそう。花は非常に面白い形をしています。花はすぐに咲きますが、実は滅多にできないそうです。その代わり6月頃挿し木（挿し芽）にすればうまくいくそうですのでやってみてください。従来から日本にいるジャコウアゲハだけでなく、朝鮮半島から移入放蝶されたホソオチョウも利用しています。花の内部には鼻の奥に向いた毛がびっしりと生えており、小昆虫が閉じこめられていることが多いです。食虫植物ではなく、毛はおしべの成熟後になくなるそうで、花粉の媒介に効果的と言われていますが真実はいかにという所です。

ウメは中国伝来の植物ですが、梅干しをはじめ古来から日本人の心に染みついた重要な木です。松竹梅といったり、サクラと比較されたり少し下位に見られることもあります。これを食する蝶は、大阪府にはいませんが、北に行けば多くいます。蕾はメスアカミドリシジミの飼育に良いとも聞きました。園芸店では盆栽用などに安く売られているので1本用意しておくと鑑賞してもよいですし飼育に便利そうです。品種は多いですがそれはあまり気にする必要はなさそうです。ただし私はまだこれを使って蝶の飼育をした経験はありません。梅に鶯といいますが、実際によくとまっているのはメジロで、愛好家はウメジロとよぶようです。俗に言う鶯色もメジロ色（黄緑）ですね（規格では緑がかった薄茶色）。

ウラジロガシは、常緑照葉樹の中でも比較的寒いところにまで進出している木で、北は新潟県まで分布しています。近畿地方でも鈴鹿山地や中国山地などの標高数百mぐらいのところにあります。これはまさにこの木を主要食樹としているヒサマツミドリシジミの分布に合致しています。民間療法では胆石などを除去するためにお茶として飲まれているようです。キレート作用のある成分がはいっているのかも知れません。カシ類の区別は難しいので他に譲るとして、少なくとも飼育にはアラカシで十分です。もう少し勉強していきます。

ウワミズザクラは、一見オーストラリアにあるブラシツリーのように、ビン洗いブラシのような花房を付けます。そのためサクラの仲間とは思えませんが、小さい花はたしかにサクラの雰囲気を持っています。花房は新しい枝の先に付きます。葉はまさにサクラという感じがします。メスアカミドリシジミは、他の多くのミドリシジミ類と違ってサクラ類を食べるのも違和感を覚えます。ウワミズは上溝で、昔、占いのために板の上に溝を彫ったことによるそうです。新芽は前年の花付き小枝が落ちた跡にでき、通常のサクラとは異なります。

イラクサ類を利用する蝶はタテハチョウ科に数種いますが、このうちアカマダラだけはイラクサ類しか利用しないようで、飼育にはこの扱いにくい植物を利用するしかありません。エゾイラクサは北海道に多いのですが、本州でも比較的標高の高い山地に行けばあるようです。イラクサ類は茎や葉裏に棘（毛様体）があり、基部に袋があってヒスタミンとアセチルコリンを含み、皮膚に刺さるとかなり痛いです。

エノキはなぜか多くの蝶に利用される木です。都市部にも非常に多く生えています。ムクノキに似ていると言われますが、一度見慣れると迷うことはないでしょう。ゴマダラチョウやテングチョウのページも参考にしてください。1年生苗が河川敷などで見つかります。漢字の榎は日本で作られた字だそうです。

エノキアオイはエノキ（リュウキュウエノキと思われます）のような形の葉を持つアオイ（カンアオイではありません）という意味で、南米原産で、南西諸島や小笠原に帰化している植物です。アオイは、本州ではタチアオイなど多くが園芸化されていますが、この花は直径1cm程度の薄い黄色の花を午後の短い時間だけ割かせるので、観賞するには難しい植物です。この葉を食べるリュウキュウムラサキは、多くの型（亜種といえるのかはわかりませんが）があり、型によって食べるものが違うようです。しかし、その中でもアオイ科のフユアオイは多くの型を育てられるという情報があります。エノキアオイも同様に大丈夫かもしれません。筆者は、アサガオ、サツマイモ、イノコズチを全く食べなかったリュウキュウムラサキを無事にこれで育てることができました。その後、この花を見たくて鉢植えで育てていますが、どうも花が咲く時間が極めて短くなかなか見ることができなかったのですが、晴れた休日に何とか撮影できました。花が完全に開いていたのは午後3時頃のたったの1時間程度でした。

エノコログサの仲間はいろいろあるようですが、イチモンジセセリはおそらく全く気にせず卵を産み幼虫も問題なく育つと思われます（確認したわけではありません）。エノコログサはいわゆる普通の雑草で、都市部においても、空き地や河川敷に繁茂しています。エノコログサは体によい食品としても注目されている雑穀の粟（アワ）の原種とされています。よってエノコログサも食用として問題なく、天ぷらは意外に美味しいという説もあります。キンエノコロのページに小穂や剥いて出てきた種子の写真を載せています。

エビスグサは、カワラケツメイに近い植物です。ハブソウにも近く、これらの植物は豆（果実）を乾燥させてお茶のように飲まれるので本州でも栽培もされています。本州には、これを利用する蝶はいませんが、沖縄以南ではウラナミシロチョウが利用するようです。

オオアブラススキを利用する蝶は多くいますが、オオアブラススキだけに依存しているのが高原の蝶のホシチャバネセセリです。オオアブラススキは、あまりなじみのない草ですが、穂が出る頃、つまりホシチャバネセセリが出る頃に高原に行くと、明らかにススキとは異なる穂が目立っています。イネ科植物はいろいろあって、どれがオオアブラススキか分かりにくいのですが、葉の中央にススキ同様の白い線があり、穂が別れた一本一本に、集合花（専門用語で総というらしい）が1個あり、集合花（総）には花（専門用語で小穂というらしい。小穂は無柄小穂と有柄小穂で1対となり、数対付いているものがオオアブラススキです。近い種類はいろいろあるようですが。

オオイワガネはヌノマオとも呼ばれる、沖縄以南に生える木です。石垣島の郊外に行くとよく目立ちます。アカタテハの食草であるカラムシに近い植物です。果実は白いイチゴのようなイメージで多数の種子が集まったもので、食べられるそうです。写真を撮ったときは、実とも分からず、もちろん食べていないのが残念です。ヤエヤマムラサキが葉裏に多数の卵を産み、母蝶がその卵のそばを離れず守っていると言われています。まだ見たことがありません。最近石垣島で増えているキミスジもこれを利用します。

関西にはウマノスズクサが多く、オオバウマノスズクサもあるそうですが私は見たことがありません。ところが静岡市近郊の山に行くとどこにでもというぐらいオオバウマノスズクサを見ることができて、最初ビックリしました。そのお陰で、ジャコウアゲハもいろんなところで見ます。葉はウマノスズクサに比べるとずっと大きく、花も派手です。冬には緑色の茎が残りますが、ウマノスズクサでは地上部はすべて枯れてしまいます。ホソオチョウは利用しないようです。

オオバコといえば、むかし、草相撲だといって、2本の穂で引っ張り合って遊んだ思い出があります。本州産の蝶ではヒメアカタテハが利用するといわれますが、私は見たことがありません。南国の蝶では、近年他の種と同様に北に勢力を広げているアオタテハモドキの飼育で孵化直後から蛹化までまったくキツネノマゴと同じ成長だったと書いてある本があり、一方生態図鑑（1984）ではかろうじて食べるともあります。メスアカムラサキやコヒョウモンモドキも食べるそうです。さて、オオバコは、大阪市近郊では河川敷や緑地公園などの草があって人が歩くところでよく見ます。郊外では田の畦などで見ます。この種子は穂の中の果実がカプセルのようになって中に数個入っていて、乾燥しているときはゴマ粒のような感じですが、水に濡れると周囲がゼリー状の物質に変化します。これは弱い粘着性を持っていて、靴底などにくっついて少し運ばれるのだそうです。強力ではない弱い粘着性というところがミソなのでしょうね。花を見るとイネ科に似ています。

大阪府には生息していませんが、アオスジアゲハの近似種のミカドアゲハの食樹です。近年の温暖化で多くの蝶が大阪府内でも見られるようになりましたが、この蝶は未だにそういうニュースを聞きません。食樹がかなり限定されていることにも因るのかも知れません。これが植樹されている伊勢神宮のある三重県では以前からミカドアゲハが見られます。オガタマノキは大阪市内でも植樹されているところがあります。園芸店で見たことはありませんがネットで検索すれば通信販売している店が見つかるでしょう。ピンクの実房を拾って中の黒い種子を出し、よく洗って表面をヤスリで軽く傷つけて植えれば生えてくるそうです。なお、近似種のカラタネオガタマまたはトウオガタマはバナナのニオイのする花の木として売られていますが、ミカドアゲハはあまり好まないそうです。今後試してみたいと思います。モクレン科の木は、コブシやモクレンとして多く植えられていますが、常緑はこの木だけですので、冬芽と葉を頼りに冬に探せば見つけやすいかも知れません。

オクエゾサイシンは、本州のウスバサイシンに近縁で、北海道と東北地方に生えるヒメギフチョウの食草です。北海道では地面一杯に群生するそうですが、私はまだ見たことがありません。吸蜜源の青いエゾエンゴサクとともに群生し、ヒメギフチョウが舞う様子は是非見てみたい光景です。オクエゾサイシンの花の萼は反り返りますが、ウスバサイシンでは反らないので花の時期では区別できます。葉はより丸みを帯びるようです。

オギノツメは本州以南の湿地に生える草ですが、蝶は今（2012年）では九州でも土着しているタテハモドキなど南の蝶だけが利用しています。最近（2011年）、石垣島で発生したイワサキタテハモドキも飼育できるようです。オギノツメは、水草として販売されているようですが、地域差がある可能性があって実際にこれらの蝶が利用できるかは分かりません。切った茎を水に差しておけば簡単に根が出るので増やすのは非常に簡単です。下に示す写真は、九州産のものですが、まだ飼育に使っていません。

大阪府には生息していませんが、ゼフィルスの一種オナガシジミの食樹です。信州ではクルミとして実が売られていておいしいそうです。大阪市内の淀川にも生えているそうですがまだ見ていません。静岡市の阿倍川には多く生えています。葉の落ちた跡は羊の顔のように見え、冬に探すときの目印になりそうです。

オニドコロはヤマノイモの近似種です。雌花の様子はよく似ていますが、ヤマノイモに比べると細いです。雄花はヤマノイモと違って白くありません。葉はこちらの方がずっと広いです。静岡市においてはダイミョウセセリはこの葉を最も好むようです。オニドコロの地下茎はヤマノイモと違ってそのままでは食用にならないので市街地に近いところではヤマノイモよりも多いのかもしれません。雌雄異株です。

オヒシバを利用している蝶を見たことはないのですが、メヒシバと比較するために載せました。メヒシバと比較して穂は太く、葉は細く長いです。

秋の七草として古来有名な花ですが、低山地ではなかなかお目にかかれません。これを食べるウスイロヒョウモンモドキも、同様に非常に珍しい蝶になってしまいました。兵庫県北部のハチ高原では、オミナエシの植栽を行なって、ウスイロヒョウモンモドキの繁殖を手助けしています。庭に植える場合には花の種として普通の園芸店で手に入ります。女郎花と書きますがこれは和製のようです。オミナは女で、オトコエシより弱々しいからとか。オミナエシは女飯でこれは粟飯の粟粒に似ているからとか。それはともかく、響きのいい名前だと思います。蝶にはそういう風情のある名前はありません。